雨のち晴れ
ふぅ、と、ついため息なんかついてしまう。
巫女としての仕事は充実してる。
ひとり娘も可愛い盛りだ。
でも
なんだろう?
この感じ。
うずうずしてたまらない。
最近ご無沙汰だからかなぁ?💦
昨日も、その前も断られちゃった。
二人目が早く欲しいって以前に
私自身が淋しくて、
頭がへんになりそう。
よし、今夜こそ❗️
ビセンテは夕飯を済ませると
最近はそそくさと2階に上がってしまって
モエギもほったらかしだ。
たぶん、ベッドでゴロゴロしてる。
アタシは夕飯の片付けを済ませると
モエギと少し遊んでやり、寝かしつけ
キッチンでポムワインをぐいっと一杯ひっかけた
女から誘うのって、
すごく勇気がいるんだからね?💦
そのへんビセンテは
わかってんのかなぁ?💦
そして
うとうとしてるビセンテの隣に
するりと滑り込むと
彼の背後にピタリと身を寄せた。
「なに? 今日は疲れてるから後にしてよ」
カーッ❗️
今日もまたお決まりの断り文句❗️
思わずアタシはビセンテの首に両腕を回して、
然るに、チョークスリーパーの形となった。
「いっつもいっつも断ってばかり❗️
少しはアタシの気持ちも考えてよっ❗️
いいもん❗️ ビセンテが相手してくれなくたって
アタシを癒してくれる男は
山ほどいるんだからっ❗️」
そう叫ぶと
咳こむビセンテを尻目に
ドアを勢いよく閉めて
アタシは別室のベッドに潜り込んだ。
どれくらい時間が過ぎただろう?
泣きながらイライラして
頭まで痛くなってきて
それでもうとうとし始めた頃。
背中の方に潜りこんでくる気配を感じた。
「さっきはゴメン。
だから、他の男の所に行くなんて言わないでよ」
そう言って、
後ろからアタシを優しく包んでくれる彼。
あぁ、この温もりが欲しかったんだわ。
首筋にくれるキスも
滑らかな指使いも、
あなたじゃなきゃダメなんだ。
「アタシこそ、ワガママでゴメンね」
巫女になる日
その日は果実の収穫の日だったわ。
農場員でごった返す果樹園に
巫女であるアントワーヌさんが突然現れたの。
ふいにそんな事を言われて!
とてもビックリしたけど、
でも、巫女になることは
アタシの幼い頃からの夢だったから
申し出を素直にお受けすることにしたわ。
アントワーヌさんに連れられて
神殿に向かう足も
何だかぎこちなくて、フワフワしてた。
アタシ、遂に巫女になるんだ。
巫女になれるんだ❗️
期待とか希望とかが
胸でピョンピョン跳ねる一方で
アタシに巫女の大役が勤まるんだろうかって
頭の中ではすごく不安で💦
体が半分に裂けてしまいそう。
「さぁ着きました。アンシィ、中へ」
アントワーヌさんの声にハッとする。
これからシズニの神前で
巫女の引き継ぎ儀式が始まる。
アントワーヌさんの口上も
申し訳ないけど、
緊張で、全然頭に入って来なかったわ💦
でも💦
アタシが引き継ぎを宣言すると
パアッと眩しい光に体が包まれて
これまでの、歴代の巫女の先輩達の記憶が
脳裏に流れ込んできたの。
それは
新しい命をとりあげる喜びだったり、
子供達に教室で囲まれる姿だったりという、
暖かい記憶。
アタシは、溢れ出る涙を
こらえることができなくなって
その場に膝をついてしまった。
「大丈夫ですよ。
アンシィ、あなたなら必ずできますからね」
国民の服に着替えたアントワーヌさんが
優しく満ち足りた笑顔で
そっと抱きしめてくださりました。
そうね。
アントワーヌさんが認めてくれたんだもの。
「ありがとうございます。
先輩方に恥じぬよう勤めを全うします」
巫女の仕事が勤まるかどうかわからないけど、
1つずつ心を込めて、キチンとこなすこと。
そんな努力の積み重ねが大切なのかもね?
233年の出来事。その11
リビングのソファーで、なんとなくダレてると
モエギが隣に来て、ちょこんと座った。
モエギ「ねぇママ、
あの黒いおっきいやつはなぁに?」
えっ?💦
そういえば、引っ越して来た時から
何となく家にあったので、
今まであんまり気にかけてなかったけど、
アレって一体何なんだろう?💦
黒くて大きい機械?でもないか?💦
重厚な蓋を持ち上げると
白と黒の細い規則的な板の列が現れる。
その1つをそっと上から押さえてみると
ポロンと音が為った。
「楽器?なのかしら?
ママにもよくわからないわ」
モエギ「わーい❗️ 私もやりたぁい❗️」
そう言って、少し背伸びをした娘は
白の板を左から順番に押し始めた。
古い機械のせいか、
ちょっぴり調子っぱずれな所もあるけど
どうしてだろう?
何故かとても懐かしい音色ね❤️
この旧市街の邸宅は
マルイ家のご先祖さまが
住んでたことがあるらしいんだけど
ご先祖さまは、
これが何かわかってたのかしら?💦
楽器、だとしたら
キチンと使いこなせていたのかしら?💦
あっちこっち触ってみたけど、
結局、この機械の事は何もわからなかったわ。
ただ、音が鳴ると、
とても心が和むって事だけはわかったの。
ミアラさんなら何か知ってるかな?
明日、久しぶりに図書館に行ってみよう。
233年の出来事。その10
明日は星の日。
まさか自分の子供に
仮面を買ってやる日が来るなんて
思わなかったわ💦
そういえば
アタシ、親に仮面を買ってもらった
記憶がないけど?💦(笑)
ま、2番目ってそんなもんよね?
ついでに
モエギに将来の夢を聞いてみたわ。
あ、神殿の巫女?💦
アタシとおんなじなんだ💦
巫女さんって、
女の子たちの憧れの職業みたいだし💦
巫女の前段階である
奏女の仕事なら、
したことがあるけど。
そりゃあ、神殿で花を摘む姿は
優雅かもしれない。
でもね💦
奏女には、表には語ることができない
隠された仕事もあるのよ。
アタシはそれが性に合ってたから
苦ではなかったけど(笑)
この子にそれが耐えられるんだろうか?💦
親としては
モエギには苦労して欲しくないの。
成人したら、
すぐにいい男捕まえて、
結婚して幸せな暮らしを
手に入れてほしい。
この国は幸いなことに
あまり働かなくても
最低限の生活は保証されてるし。
でも💦
本人がやりたいって言うのなら、
反対することはできないのかな?💦
親のエゴを押し付けちゃダメなよね?😓
ビセンテは何て言うだろう?
モエギをすごく可愛がってるから
いざ結婚だなんて言ったら
気絶する勢いかもね?(笑)
233年の出来事。その9
アリーの出産に立ち会いました。
可愛らしい女の子が生まれたわ❤️
親友の出産って、何だか感動💦
つい泣きそうになっちゃった💦
早速赤ちゃんにミルクをあげようとするアリー。
「大丈夫よ、できるから❗️❤️」
って💦
赤ちゃんをそんな風に扱ったらダメよ❗️😫
アリーって昔から大胆というかー
たまに大雑把な時があって、
見ているこっちがドキドキするくらい💦
これは、抱っこの仕方から
指導が必要かもしれないわね?😅
名前はアリシアちゃん。
アリーにそっくりだから
旦那さんが付けたみたい😊
アリーの旦那さんって、
ほんとアリーに夢中よねぇ❤️(笑)
そんなことを笑いながら話してたら
ビセンテがアタシを迎えに来たわ。
「赤ちゃんって可愛いわよねー。
うちも早く、もう一人欲しいな😊」
するとビセンテは、
「子供は授かり物だから、
焦ってもしょうがないよ?
それに、うちには既に
可愛い娘がいるじゃない😉」
そうね💦
アタシ、何をそんなに焦ってるんだろ?💦
モエギだって可愛い娘だわ。
大切に育てなきゃいけないのに。
可愛がるだけが育児じゃない。
まずはモエギを
ちゃんとした大人に育てなくてはね☺️
アタシにそれができるんだろうか?💦
233年の出来事。その8
今日は結婚記念日なんだけど
ビセンテにはデートを断られちゃったから💦
親友アリーと食事に来たの😊
アリーはいつも付き合ってくれるから
大好きよ❤️
偶然同じ物を注文したわね☺️
こういうのって初めてじゃない?
友達同士の結婚式に呼ばれたわ。
リアーヌちゃんと、ラウール君。
この二人が付き合ってるなんて
知らなかったからビックリよ😊
お幸せにね❤️
日付けが変わって
アリーの出産予定日が来たわ💦
どうしよう💦
アタシまでドキドキしてきちゃった😫
アタシ達
小さい頃から一緒にいるけど
まさか自分たちが
母親になる日が来るなんて
想像できなかった。
これからも
そうね、お婆ちゃんになっても
アリーとは、ずっと一緒よ?❤️
赤ちゃんの世話は大変だから、
困ったことがあったら
何でも言ってね❤️
アタシの方が、
少しだけ育児の先輩なんだから🎵
233年の出来事。その7
アリーの赤ちゃんも順調みたい😊
男の子、女の子、どっちかなぁ?❤️
うちの娘と仲良くしてくれたら素敵ね。
そういえば
アタシとビセンテのご先祖さまって
親友同士だったらしいわ?💦
それを思うと
何だか不思議ね😁
モエギを着替えさせたわ。
うちは魔銃の家系だから
それっぽく?ね😁
でも
モエギは将来何になるつもりなのかしら?💦
こないだ聞いた時は
「サリアの花❗️」
なんて言ってたけど😓
娘以前に
アタシはどこを目指してるんだろ?💦
農管としても中途半端。
武術の腕前も中途半端💦
これといって、やりたいことはない。
試合は痛いから苦手だし。
ラダの世話も飽きる事がある。
神殿の仕事は楽しかったなぁ。
でも
巫女のアントワーヌさんは
その座を誰にも譲るつもりはないみたい。